いつもお世話になっております。孫平です。
今回の内容を伝える前に、まずみなさんには以下の質問に答えていただきたいと思います。
項目ごとに点数をつけて、合計点を出して下さい。
1点 まったくあてはまらない
2点 あまりあてはまらない
3点 どちらともいえない
4点 ややあてはまる
5点 非常にあてはまる
①高級な車や家を所有している人に憧れる
②自分が買った物で人生の成功を判断しがちである
③それほど必要のない物まで買いたがる
④高価な物にかこまれているのが好きだ
⑤高級品をもっと所有できれば幸せになると思う
⑥自分の欲しい高級品が買えないとイライラする
⑦高級品を買うと満足を覚える
⑧家族や友人と比べて物へのこだわりが強い方だ
⑨ブランド品のためなら大金を払ってもいいと思う
⑩他人が羨ましがる物をもつのが好きだ
いかがでしたでしょうか。なんとなくお分かりいただけたかと思いますが、この質問はみなさんの「物質中心指向」の度合を測るものです。
合計点数が10〜20点=低い、21〜40点=中間、41〜50点=高い、となります。
物質中心指向が高い人ほど、物の所有を重視しがちで、物を幸せの中心として考え、所有している物で自分や他人の成功を測る傾向があると言われています。
一方物質中心指向が低い人は、物よりも自分の体験や人間関係に価値を置く傾向があると言われています。
気になるのは、どちらのタイプの方が幸せを感じやすいか?という点です。
この疑問に答えてくれるものに、心理学者のリーフ・ヴァン・ボーヴェンとトマス・ギロヴィッチの研究がありますので、簡単に紹介しましょう。
①調査の回答者に、「自分が幸せになるためにお金を払った品物と体験」を書き出してもらい、その買い物で幸せを感じた割合を答えてもらった。
②調査の参加者を、「最近買った品物について書くグループ」と、「最近買った体験について書くグループ」に分け、現在の気分を評価してもらった。
結果はどちらの調査でも、品物を買うよりも体験を買う方が、短期的・長期的な幸福感が高いことが分かった。
つまり、物質主義の人はそうでない人よりも幸福感が低い可能性があると言えそうなのです。
より幸せになるお金の使い方とは?
以上の調査からも分かるように、お金は品物よりも体験に使った方が幸福感が高くなりそうです。
品物は、買ったとき一時的に幸福感が高まりますが、人間のもつ「快楽適応」(良いことも悪いことも時間が経つと慣れること)によって、その幸福感は次第に元に戻ります。
一方体験は「思い出」になることが多く、人は思い出を「美化」する生き物です。そのため体験の価値は時間が経っても色褪せることがなく、むしろかけがえのない思い出へと進化するのです。
そのため、品物よりも体験にお金を使った方が、より長く幸福感を維持できるのです。
体験は、例えば旅行とか映画とか、習い事とかアトラクションとか。
また、体験をするための品物を買うというのも良いかと思います。例えば、野球をするためにグローブやバットを買うとか、ですね。
もう一つ、より幸せになるお金の使い方をご紹介します。
ブリティッシュ・コロンビア大学のエリザベス・ダンらが行った2008年の調査では、収入の多くを自分以外のために使う人の方が、自分のために使う人よりも、はるかに幸福感が大きいことが分かりました。
疑い深い人は、他人のためにお金を使うから幸せになるのではなく、幸せな人だから他人のためにお金を使うのではないかと思うでしょう。
この調査では、その反論に答えるための実験も行っています。
実験参加者に5ドルまたは20ドルを渡し、そのお金を「自分のために使うグループ」と「他の人のために使うグループ」にランダムに分け、その日の夕方5時までに渡したお金を使うように指示した。
その結果、金額の大小に関係なく、友人や家族など他人のためにお金を使ったグループの方が、自分のために使ったグループよりも、幸福感がはるかに高かった。
この結果から、「幸せな人だから他の人のためにお金を使う」という考えは、必ずしもあてはまらないことが分かりました。
脳科学の観点からも、この幸福感は証明されています。
オレゴン大学の神経経済学者ウィリアム・ハーボーが2007年に行った実験では、他人のためにお金を使うときに「尾状核」と「側坐核」という2つの脳の部位が活発になることが分かりました。
この「尾状核」と「即座核」は、美味しいものを食べたり、人から褒められたりといった、私たちの最も基本的な欲望が満たされたときに活発になる部位なのです。
つまり、他人のためにお金を使うことと幸せを感じることには、密接なつながりがあると言えるのです。
他人のためにお金を使うことが、幸福感を高めることはお分かりいただけたかと思います。
しかし、そんなことをするほど経済的な余裕はない、という人もいるかと思います。
そんな人のために、心理学者ソニア・リュボミアスキーらが2005年に行った研究結果を紹介しましょう。
簡単に言うと、「他人に親切をすると幸福感が高まる」のです。
さらに、1日5回親切な行いをした人は、そうでない人に比べて、なんと40%も幸福感が高まったのです。
お金の使い方とは関係ありませんが、お金を使わなくても簡単に幸福感を高めることはできるのです。
まとめ
幸福感を高めるために、私たちができることをまとめると次のようになります。
①品物よりも体験にお金を使う
②他人のためにお金を使う
③親切をする
是非みなさんも、毎日の生活の中で少しずつでも意識してみて下さい。ではまた次回お会いしましょう。
【参考文献】
リチャード・ワイズマン『その科学が成功を決める』2012年(文藝春秋)
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