いつもお世話になっております。孫平です。
今回は、前回の予告通り「ストレスに意味を見出す方法」についてです。
それではさっそく参りましょう。
自分の価値観について考える
まずは、日常のストレスに意味を見出すマインドセットを身につけるための優れた方法として、1990年代にスタンフォード大学の学生たちを対象にした研究を紹介します。
学生たちは3週間の冬休みの間、日記をつけることになった。
ひとつのグループの学生たちは、「自分にとって重要な価値観はなにか、そしてその価値観に結びつくどんな活動を行ったか」を日記に書くよう指示された。
もうひとつのグループの学生たちは、その日にあった良いできごとを日記に書くよう指示された。
すると、冬休み終了後、自分の価値観に関することを日記に書いた学生たちは、ほかの学生たちにくらべて健康状態が良く、精神的にも調子が良いことが分かった。
研究者たちが、合計2,000ページ以上に及ぶ学生たちの日記を分析して導き出した結論は、「自分の価値観について書くことによって、自分の人生に意味を見出すことができる」ということだった。
自分の価値観に関する日記を書いた学生たちは、日々のささいなできごとが、実は自分自身の大切な価値観と結びついていることに気付いたようなのです。
この気付きによって、それまでならイライラしていたはずのできごとにも、自分なりに意味を見出せるようになったそうです。
このスタンフォード大学での研究を皮切りに、その後同様の研究が数多く行われました。
その結果、自分の価値観について書くことは、その他の心理学のマインドセット介入の中でも、とりわけ効果が大きいことが分かったのです。
短期的な効果としては、
・自信が強まる
・落ち着きが生まれる
・誇りや強さを感じられる
・他者への愛情や思いやりが深まる
・我慢強くなる
・自制心が強くなる
・ストレスを感じてもくよくよ悩まなくなる
などが挙げられます。
長期的な効果としては、
・メンタルヘルス(心の健康)が向上する
・病院に行く回数が減る
・減量、禁煙、禁酒に成功しやすくなる
・前向きになれる
などが挙げられます。
さらに驚くべきことに、そのような効果を得るために必要なのは、自分の価値観を紙に書くというたった1回のマインドセット介入だけだったのです。
しかもその効果は、何ヶ月も何年も持続していたのです。
なぜたった一回のマインドセット介入が、これほどまでに大きな効果を発揮するのかを探るため、スタンフォード大学の心理学者、ジェフリー・コーエンとデイヴィッド・シャーマンは、過去15年間に行われたマインドセット介入に関する数々の研究を分析しました。
その結果導き出された答えは、「ストレスを感じた経験についての考え方が変わり、対処できる自信がつくため」というものでした。
そのようなマインドセットが定着すると、「自分ならできる」「自分なら大丈夫」「この経験をバネに成長できる」と思えるようになります。
つまり、自分の価値観についてよく考えると、ストレスを感じたときに、心のなかで自分に語って聞かせるストーリーが変わってくるのです。
その結果、困難に直面しても避けずに向き合おうとし、厳しい状況の中にも、意味を見出せるようになるというわけです。
自分の価値観を深く認識した結果、日々のできごとに対する考え方が大きく変わったのです。
あなたにとって大切な価値観は?
価値観について考えることによる効果が分かったところで、ここからは実際に、価値観のマインドセット介入ワークを行なってみます。
以下に挙げる価値観の中で、皆さんにとってとくに大切なものを3つ選んで下さい。(この中にないものであれば、ぜひそれを書き出して下さい。)
度量、アートや音楽、チャレンジ、コミュニティ、協力、好奇心、効率性、倫理的行動、信仰や宗教、友情、感謝、調和、誠実、独立、相互扶助、生涯学習、マインドフルネス、忍耐、説明責任、運動競技、連携、思いやり、勇気、規律、情熱、優秀、家族、楽しみ、幸福、健康、名誉、革新、喜び、愛、自然、平和、冒険、お祝い、有言実行、能力、創造性、発見、平等、公正、自由、寛容、勤勉、人助け、ユーモア、品位、リーダーシップ、忠実、率直、個人的成長、ペットや動物、実用主義、機知に富む、質素倹約、信用、政治、問題解決、自分への思いやり、強さ、意欲、プラスの影響、信頼性、自立、伝統、知恵
3つ選んだら、その中からさらに1つ選んで、その価値観が大切だと思う理由を10分間で書いてみましょう。
また、その価値観を日常生活でどのように活かしているか、そのために今日はどんなことをしたかも書いて下さい。
何か難しい決断を迫られたときに、その価値観にしたがって決断を下せるかどうか、を考えてみるのもよいでしょう。
この10分間ではストレスについては何も書きませんが、ストレスに向き合う皆さんの態度には確実に変化があらわれます。
残りの2つの価値観についても、同じ作業をしてみるのもよいでしょう。
このワークで認識した、皆さんにとっての大切な価値観を忘れないようにして下さい。
しかし、実際にストレスを感じたときに、自分の価値観を冷静に思い出すのはなかなか難しいかもしれません。
そんな方におすすめの方法があります。
ウォータールー大学やスタンフォード大学で行われた実験では、自分にとって大切な価値観を書いたブレスレットやキーホルダーを肌身離さず身につけ、ストレスを感じたらそれを見ることで、困難な状況に対処しやすくなる効果が確認されています。
ブレスレットやキーホルダーに限らず、パソコンのモニターに付箋を付けたり、手帳に書いたり、携帯の待ち受けにしたり、皆さんがストレスを感じた際に、自分の大切な価値観をすぐに思い出せるアイテムを持っておくとよいでしょう。
そんな一人ひとりの大切な価値観は、きっと皆さんの助けになってくれるはずです。
【参考文献】
ケリー・マクゴニガル『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』2015年(大和書房)
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