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「ビッグファイブ(5つの因子)後半」

更新日:2022年4月18日




 いつもお世話になっております。孫平です。



 今回で最後となる、ビッグファイブ5つの因子の解説です。最後は「外向性」です。






 それではさっそく参りましょう。








⑤外向性


 外向性は、研究対象になることがもっとも多いパーソナリティ特性です。ここでは、外向性が高い人=外向型と、外向性が低い人=内向型の特徴についてみていきたいと思います。



 

 その前に、外向型と内向型の、生理学的な違いについて説明します。


 



 両者の違いは、脳の新皮質の特定領域における覚醒レベルの違いだと考えられています。そして、外向型は普段の覚醒レベルが低く、内向型は高い状態にあります。



 私たちが日常生活で適切に振る舞うには、覚醒レベルを最適に保つ必要があります。そのため、外向型はもともと低い覚醒レベルを上げなければならず、逆に内向型は高い覚醒レベルを下げなければ最適値にならないのです。



 その結果として、もともとの覚醒レベルが低い外向型は、刺激的な状況に好んで身を置き覚醒レベルを上げようとし、もともとの覚醒レベルが高い内向型は、刺激的な状況を避けることで覚醒レベルを下げようとするのです。




 私たちが普段目にしている、外向的な人と内向的な人の言動の違いは表面上の結果であり、根本にはそのような理由があるのですね。






 それではここからは、外向型と内向型の主な特徴についてまとめてみていきます。






 

・車の運転では、外向型は覚醒レベルを上げなければいけないため、音楽を大音量でかけたり、スピードを出したり、交通規則を破ったり、携帯を片手に運転したりと、事故を起こしかねない強気の運転をする。

 一方内向型は、もともと運転自体をしたがらず、したとしても事故にならないことを祈りながら、不安を常に感じながら運転をする。




内向型は、外向型よりも痛みを強く感じることが多い。(情緒安定性が低い場合は特に。)例えば自分が親だとして、何かにつけて痛がってばかりいる内向型の子どもを「めそめそするな」と怒るのは良くないことだと言える。

 逆に外向型の子どもは、痛みを伴うような行動を、自ら好んですることもある。




・内向型はアルコールを摂取すると、最適な覚醒レベルまで下がるため、結果として調子が良くなり饒舌になりやすい。




・コーヒーを飲んだ場合、カフェインの刺激により、外向型は効率的にタスクを行えるようになるが、内向型はパフォーマンスが低下しやすい。

 重要な仕事や会議、商談の前には、外向型はコーヒーを飲んだ方が良く、内向型は控えた方が良いかもしれない。




・学校の成績では一般的に、小学校から大学を通じて、内向型の方が良い成績をとりやすい。しかしそれは、内向型の方が知能が高いからではない。実際、外向型と内向型にIQの差はないことが明らかになっている。

 これは、小学校以降の現在の学校教育環境が、内向型に適しているからだと考えられている。それを裏付けるように、幼稚園では外向型の方が成績が良いという研究結果もある。




・知的パフォーマンスにおいて、外向型は短期的な記憶力に優れ、内向型は長期的な記憶力に優れている。




・作業において、外向型は質より量を重視し、内向型は量より質を重視する。




・コミュニケーションスタイルにおいて、外向型は相手に近づき大きな声で話す。また、頻繁に相手の肩や背中を叩いたりハグをする。また、言葉遣いも直接的で単純明快な表現をする。

 内向型は落ち着いて控えめな様子で話し、相手の身体に触れることはあまりない。言葉遣いは、遠回しで曖昧な表現を好む。




・外向型は「報酬」がモチベーションになるが、内向型は「罰」(罰を避けること)がモチベーションになる。




・性生活に関して、1ヶ月あたりの性交回数は、内向型の男性は3.0回、外向型の男性は5.5回。内向型の女性は3.1回、外向型の女性はなんと7.5回。

 しかし、内向型の人には思い出してほしい。内向型は「量より質を重視する」ということを。

 





 ここまで見てきたように、外向型と内向型ではかなり大きな違いがあります。しかし、この外向型とか内向型が唯一のパーソナリティ特性ではないということを忘れないで下さい。




 先に申し上げたように、ビッグファイブによるパーソナリティ特性は、5つの因子の尺度によって表され、それはとても複雑なものです。



 そのため、外向型とか内向型といった単純なタイプに当てはまるのはナンセンスなのです。




 ここまでは、ビッグファイブテストを行い、みなさんが自分のおおよそのパーソナリティを把握した上で、5つの因子について解説してきました。



 今後は、この知識を前提として、パーソナリティについてのお話なんかもしていきたいと思います。






 それではまたお会いしましょう。







【参考文献】

ブライアン・R・リトル『自分の価値を最大にする ハーバードの心理学講義』2016年(大和書房)




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