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「服装の影響力」

更新日:2022年4月11日




 いつもお世話になっております。孫平です。


 今回は、自分の服装が他人に与える影響力についてみていきたいと思いますが、どちらかというとビジネス向けの内容になります。




 皆さんの中にも、重要な取引先やお得意様との商談やプレゼンをする場面だったり、または大勢の人の前(今ではzoomなどオンライン上がメインになるでしょうか)で講演や講義をする方がいらっしゃるかと思います。



 そのときに着ている服装で、相手を自分の望む方向にもっていくことができたら、とても優位に立てると思いませんか?



 知識や経験に裏打ちされた仕事の中身こそ一番大切なのは間違いありませんが、服装一つで相手の意思決定に影響を与える、そんなことが可能かもしれないという研究をご紹介しましょう。









服装が変わっただけで…


 服装における科学的研究の中で最もよく知られているのが、次に紹介する社会心理学者のL・ビックマンの研究です。



 

 調査員が街行く歩行者を呼び止め、何らかの要求に従うよう求めた。


 要求の内容は、「道路に落ちているゴミを拾ってもらう」「バス停のそばの特定の場所に立ってもらう」「見ず知らずの人の駐車料金を肩代わりしてもらう」などであった。



 要求をする人物(調査員)はそのままで、その人物の服装だけ、カジュアルなものから警備員の制服といったものに変えて実験を行った。



 その結果、要求をする人物が警備員の制服を着ている場合は、その要求に従う人の数が普通の服装のときより2倍多くなった。

 



 そして、これ以降に行われた他の実験でも、やはり同様の効果がみられたのです。





 イギリスで行われた研究では、人が健康上の注意を専門家から受けそれを覚えている割合は、その専門家が聴診器を身に付けていたときに著しく高いことが分かりました。


 興味深いことに、聴診器はまったく出番がなかったにも関わらず、ただ身に付けているだけでそのような効果をもたらしたのです。






 また別の実験では、信号を無視して横断歩道を渡る人がスーツを着ていた場合とカジュアルな服装だった場合では、その人にならって横断歩道を渡る人の数が、スーツだった場合の方が3.5倍も多かったそうです。








なぜ、そうなるのか


 このような現象がなぜ起こるのか、皆さんもおそらくお気づきでしょう。



 そうです。それは、「権威」です。



 


 私たち(の脳)はできるだけ面倒なことをしたくないため、パッと見た情報だけで、この人は信用に足る人物かどうかを判断したがります。


 友人や知人ならいざ知らず、あまりよく知らない人について手がかりとなる情報は、もう「服装」しかないわけです。



 そのため、警備員の制服を着ている人や、より専門家らしい服装をしている人、いかにも地位が高そうな服装をしている人の言動には、その人のことを全く知らなくても、「服装を見た感じ信用できそうな人だな。」と省エネで判断してしまい従ってしまうのです。




 

 

 このことから、私たちが服装を戦略的に利用するのであれば、自分の知識や信用、社会的立場にふさわしい格好をする必要があります。


 短期的な付き合いで自分にだけ利益があればいいという状況なら、本来の自分よりも背伸びした「ハッタリの服装」で勝負してもいいかもしれません。


 しかし化けの皮が剥がれたときのことが心配なら、やはり今の自分の実力から「ほんの少しだけ背伸びしたぐらいの服装」が良いでしょう。




 では、地位もお金もない人はどのような服装をすればよいのでしょうか?









郷に入っては郷に従え


 見た目が与える影響力は権威だけではありません。



 もう一つの影響力、それは「類似性」です。



 

 これも私たち(の脳)が、できるだけ省エネで安全な答えに辿り着くための、大きな判断基準になります。



 ある知らない人が、自分と同じような服装をして、同じような持ち物を持っていて、一言も話していないのになんだか親近感を覚えてしまった経験はないでしょうか?



 つまり、自分と同じような格好をしている=自分と同じような価値観を持っている=自分の敵ではない、と判断してしまうのです。(正解か不正解かは別として)



 だから、この「類似性」を利用しない手はありません。






 もし、知識や経験、社会的地位があまりなく、服装で「権威」を出すには少々無理がある人の場合は、「類似性」を利用しましょう。



 例えば、影響を与えたい人が属する会社やグループのドレスコードを下調べし、それに合わせた格好をしていったり、その人個人について分かっている情報があれば、それを手がかりにしてみたり。


 

 とにかく、相手やその周りにいる人たちと同じような服装を心がけるだけで、相手は自分に親近感を抱いてくれるはずです。(少なくとも、全く類似性のない服装のときよりかは)








最強なのは…


 言うまでもなく、一番理想的な服装は、「権威性」と「類似性」の両方の要素が入っている服装です。



 ポイントは、「基本的には相手と似たような格好をする。しかし、相手より一段階立派に見えるように心がける。」ということです。




 一段階立派に見せるのは、靴や時計や帽子や鞄といった小物だったり、服の素材の違いだったり。

 カジュアルな場所に、あえてジャケットやネクタイをして少しだけ周りとズラすという手もあるでしょう。




 

 方法はいろいろと考えられそうですが、まずは、服装で「権威性」と「類似性」を出すことを意識してみて下さい。








【参考文献】

スティーブ・J・マーティン、ノア・J・ゴールドスタイン、ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器 戦略編』2016年(誠信書房)






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