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「自然のパワー① 視覚と自然 前半」

更新日:2022年4月11日




 いつもお世話になっております。孫平です。

 皆さんは普段から自然と触れ合っていますか?子ども時代や、20代の体力がありアクティブだったときと比べて、外に出る機会が減ってしまったという方も多いのではないでしょうか。


 

 かくいう孫平も現在30歳ですが、もともとの趣味が読書ということもあり、1日自宅から出ないという日も少なくありません。



 インドア派の人にとっては、「外に出ること」が、けっこう面倒だったり苦痛だったり、そもそも魅力を感じなかったりするんですよね。




 しかし今回お伝えする、自然が私たちに与えてくれる恩恵を知れば、少しは「外に出てみようかな」という気持ちになれるのではないかと思います。


 

 

 自然に触れることが身体に良いというのは、誰もがなんとなく知っていることと思います。


 では具体的にどんな効果があるのか?というのを探っていくのが今回のテーマになります。



 ただ、自然から恩恵を得るための方法はいくつかあるため、今回はインドア派の人でも実践しやすい、「自然を見る」ということに焦点を当てていきます。


 それではさっそく参りましょう。







自然が見える部屋と健康の関係


 約160年前、かのナイチンゲールが記した『看護覚え書き』には、こんな一節があります。


 

 病人の看護にあたってきたこれまでの経験から率直に申しあげると、新鮮な空気に次いで必要なのは日光です。

 興味深いことに、ベッドに横たわる患者さんはほぼ間違いなく、顔を日光の方に向けています。まるで植物が日光に向かって伸びていくように。

 


 現在では、ナイチンゲールが発見した患者の行動の意味が、少しずつ分かってきています。





 

 

 まずは、心理学者で建築家でもあるロジャー・ウルリッヒの研究をみてみましょう。


 

 胆嚢摘出術を受けた患者の記録を調べた研究では、術後、窓から林が見える病室で過ごした患者は、窓からレンガの壁しか見えない病室で過ごした患者よりも、入院日数が短く、鎮痛剤の投与を求める回数も少なく、看護日誌でも前向きな精神状態だと評価されていた。

 


 

 また、1981年にアメリカのミシガン州にある刑務所で行われた調査では、窓から農場や森が見える監房に入っている囚人は、殺風景な中庭しか見えない監房に入っている囚人よりも、医師の往診を受ける回数が少ない、ということが分かっています。



 

 

 


 さらに、イリノイ大学の心理学者フランシス・クオと、同僚のウィリアム・サリヴァンが、シカゴの低所得者向け団地に住む145人の女性(大半がシングルマザー)を対象にした調査では、


 

窓から木や緑が見える部屋の住人より、アスファルトの風景しか見えない部屋の住人に、心理面での攻撃性、軽中等度の暴力性、あるいは重度の暴力性が見られた。

 


そうです。クオとサリヴァンは同じ団地で、今度は子どもを対象に調査を行いました。


 

殺風景な部屋に住む子どもは、衝動的な行動を起こしやすく、気が散りやすいうえ、目先の欲求を優先しやすいことが分かった。

こうした傾向が見られるのは女子だけで、男子には当てはまらなかった。

 

そうです。男子にその傾向が見られなかった理由として、男子は女子よりも外で遊ぶ機会が多いからではないか、とクオは推測しています。






 クオとサリヴァンが、シカゴのアイダ・B・ウェルズ公営住宅で行った調査では、団地にある中庭の緑の豊かさの度合いと、そこの住人による犯罪件数にあきらかな相関関係が見られることも分かりました。

 

 具体的には、窓から豊かな緑が見える棟の住人は、緑が見えない棟の住人と比べて、窃盗犯罪の件数が48%少なく、暴力がからむ犯罪の件数は56%も少なかった、そうです。


 

 

 その後の住人への聞き取りでは、中庭があることで外に出る、その結果、住人同士が顔見知りになり、互いの行動に注意を払うようになったそうで、緑豊かな中庭の存在が、社会行動の変化を間接的に促していたことも分かりました。


 実際に、緑豊かな中庭に面した棟の住人は、互いに助け合い、協力し合うことを大切にしており、他の住人との一体感を覚え、社会活動に参加する機会も、自室への訪問客も多かった、そうです。







まだまだある、緑の効果


 前述のウルリッヒや、クオとサリヴァンの研究の他にも、数多くの研究から自然や緑がもたらす効果が報告されています。


 簡単にまとめていきます。




 

・同程度の収入の世帯であれば、緑の多い地域に暮らす住人の方が孤独感を感じにくい。




鉢植えがある部屋にいる人は、鉢植えがない部屋にいる人に比べて、寛大になりやすい。




樹木のある通りを運転すると、運転時の苛立ちやストレスが軽減され、より安全な運転をしやすい。




・複数の研究結果が、緑が身近にある環境にいると、向社会的行動をとりやすくなり、地域社会との連帯感も強まることを示した。


 



 

 とにかく自然には、私たちに良い影響を与える力が確実に存在しているようです。


 

 ただ単に日常生活の中で緑が目に入る環境かどうかというのが今回のポイントで、アウトドア活動や自然の中でスポーツをしているかどうかについては述べられていないのです。(もちろん、そうした活動もしている方が健康上のメリットが大きいのは間違いありません。)




 

 インドア派の人でも、窓から緑や自然の風景が見える場所で趣味活動をすることは可能でしょう。今から無理してアウトドア派になる必要はありません。


 

 都会に住む人で、窓を開けてもコンクリートや人工物しか見えないという人は、部屋に観葉植物を置くことをおすすめします。

 自然の風景ポスターを貼るのも効果があるようですが、本物の植物の方が効果は高いです。






 皆さんも、自然の中で過ごすと気持ちいいとかリラックスしたとか、そうした経験は必ずあると思います。


 今回は、その効果の具体例をまとめてきましたが、自然がある方が良いというのは当たり前っちゃ当たり前の話です。




 ではなぜ、自然を見ると私たちの身体には良い変化が表れるのか…。

 

 次回は、私たちの身体と自然が「共鳴」する理由について解説していきたいと思います。





 それではまたお会いしましょう。





【参考文献】

フローレンス・ウィリアムズ『 Nature Fix 自然が最高の脳をつくる』2017年(NHK出版)




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